2022.08.08 #TOHARA

IRONMAN LAKE PLACID(アメリカ、ニューヨーク州) 戸原 開人

8時間45分(スイム 58分51秒/バイク 4時間39分56秒/ラン 3時間1分15秒)

PROカテゴリー 6位

久しぶりのIRONMANレース復帰!

今回出場するレースはアメリカのニューヨーク州北部で開催されるIRONMANレイクプラシッド。レイクプラシッドは1980年に冬季五輪が開催された場所で、オリンピックセンターの横が今回のフィニッシュエリアだ。

それにしてもIRONMAN参戦は久しぶりですね。コロナコロナと騒がれるようになってから、結婚したり子供が生まれたり、大会の中止や渡航の制限、怪我もありIRONMANはお休みしていましたが、また大会に参戦できるのは嬉しいです。
今回は44日間、家族を連れての長期遠征。レイクプラシッド参戦後はカナダに移動してもう1レースIRONMANに出場します。

 

さて、遠征の出来事を書いていると長くなるのでレーススタート1分前に時を進めよう。

今回のレースはアメリカの異常気象的な暑さを受けて、避暑地であるレイクプラシッドもかなり気温が上がり、頼りにしていたウエットスーツの着用は禁止。事前の予想では、スイムではパックが2つ出来ることを想定していた。

前のパックは自分にはペースが速すぎて入れない。後ろのパックは自分には余裕があるだろうけど、レース全体でみると2つのパックの間を泳ぐよりも、最初から後ろのパックに乗った方が良いと思う。

スタートダッシュは落ち着いて自分自身余裕を持って泳げるはずの後ろのパックに入ることを目標にした。選手のコールが終わり、号砲が鳴る。8時間以上の長い旅が始まった。

スタート後は若干落ち着かない時間はあったが、無事に後ろのパックにジョインする。ペースも速くないので余裕はあるが、前の選手の後ろを泳いでエネルギーの節約を心がける。時折間が空いてしまっても問題なく復帰できた。

しかし1周目の終わりごろから既に疲れを感じてくる。次に間が空くと復帰がキツイだろうと感じ、前の選手から離れないように集中する。しかし、周回終了時の上陸等の慌ただしいタイミングで前とのギャップが空いてしまう。これはまずいな、と思いつつも差をつめることが出来ずに千切れてしまう。

これから一人旅か。疲労も感じるし1人で泳いだら大幅なタイムを失ってしまう。事前の想定ではおそらく同じパックでスイムを終える、バイクの強いMicheal WeissMatt Russelと一緒にバイクを漕ぐのか、マイペースで行くのか悩みどころだな、と思っていたけど、悩むまでもなく私は既にスイムで千切れている。ははは。

意気消沈してスイムを上陸。先頭は8分差の16位と聞き絶望。バイクの強い選手が多い前のパックは視界に入らないので追いつけない。一人旅決定だ。青春18切符で旅したあの日を思い出すぜ。

 

バイク

この位置でバイクを始動するとは思わなかったけれど、とにかくゴールを目指して進むしかない。前には追いつけないし、後ろの選手はバイクが強くはないので、後ろを期待して緩めてもいけない。コースはとてもきつく、2周目をしっかり走ることが重要だ。それにバイクパートだけでは上位に行けないので良いランニングも必須だ。もう大きなミスをしないようにしよう。一人の利点はペース配分を自分でコントロール出来ることだ。パックに乗ると空気抵抗が減り、速く走れるけれど、集団のペースの上げ下げで疲労がたまりやすくなる。今日は一人旅決定なので、最初速くて後半潰れる、といった愚かなミスは避けなくてはならない。マイペースで漕げる唯一の利点を生かして自分の実力を発揮しよう。

最初の20km2人を抜いてエイドステーションに到着。走りながら水を受け取ると、ウォーターはペットボトルだった。ペットボトルでもなんでも良いのだけど、このボトルは径が小さいので、エアロバーの間にあるボトルケージに置くとガタガタとする。ここにボトルを置く予定だったが、どう考えても途中で落ちる。困ったぜ。

仕方ないので自分で用意したサドル後ろの補給用ジェルが詰まったボトルをエアロバーの間に置き、ペットボトルをサドルの後ろのケージに入れることにする。径は違うけれど、サドルの後ろは地面に対して垂直にケージを設定しているので、よほど振動が無い限り落ちない。しかし適宜飲む飲料用のボトルをサドルの後ろに置くのはかなりのロスだ。取るときに上体を起こさなくてはならない。しかし多少ロスがあってもしっかり水分の補給が出来るようにすることが重要だ。

その後もほとんど一人旅だったが、ペース配分を最適化しようと努力をしたので、大幅にペースダウンすることなくバイクを終えることが出来た。バイクは前より強くなっているので、以前ほどバイクパートで差は広がらなかった。まだ上位に行くことは可能だろう。

 

ラン

ランは得意なパートだけど、今年は腸腰筋の痛みに悩まされているので、あまり練習を詰めていない。最近になり痛みは消えたが、違和感が残っているので不安は拭えない。自分の練習状況や現在の疲労度から無理のないペースを心がけて10位でランスタート。

ランスタートして早々、自分の頭の中がトイレに行きたい要求で支配される。トイレに行くとタイムロスをするので、ある程度勝負の行方というか、自分の順位的な着地点が見えてくるまで我慢だ。とは思うものの、そんなに我慢は出来ません。スタート後2km程度でトイレに行く(小です)。今日1日で一番幸せな時間だ。しかしレース中のトイレというのは勢い止むことを知らない。1分以上ロスをしてしまった。私もこれくらい勢いよく走りたいね。

トイレ休憩のお陰で足取りも回復。いい感じに走れるようになった。最初の10km程度で折り返しがあるので、ここで前との差をチェック。前2人は130秒くらいの差だ。トイレに行っていた事を考えると自分の方がかなりペースは速い、直ぐに追いつくだろう。しかし走り出してまだ10キロなのに足の裏が痛い。トランジットで靴下を履くときに踵の位置が微妙にずれてしまったけれど、構わず履いてしまったからかもしれない。この先もしかしたらこの靴擦れのような症状が悪化して走れなくなるかもしれない。またロスをしてしまうのは痛いけれど、最悪の事態を避けるために靴下を履きなおすことにした。ああ、トランジットで直しておけばロスは最少だったのに。靴下の履きなおしには30秒程度かかり、おまけに靴を履くタイミングで足が痙攣してしまった。泣き面に蜂ですな。

やっと落ち着いて走れるようになったので、落ち着いて前を追う。19km付近で6-9位の選手が固まっていたので、この区間は大変気持ちが良かった。ボーナスステージに突入したかのように順位を上げて6位まであがる。やったね!

5位はかなり先なので難しそうだけれど、明らかに差は詰まっているからまだまだ頑張ろう。しかし、中間点を過ぎてから次第に足取りに陰りが見え始める。キツイコースと暑さ、自分の状態の悪さにより、予想以上に消耗していたようだ。28km付近の折り返しで5位との差が詰まっていないのを確認してからは、もう前を追うのはやめて6位をキープするために走ることにした。後ろは2分差なのであんまり落ちると順位を維持できない。しかしどうも頭がクラクラするし、足がとても重い。1km430秒ペースまで落ちてしまう。まだ残り距離があるのに、とてもしんどい。後続もこのコンディションだとおそらくペースダウンするだろうから、430/kmのペースでもキープすれば順位は守れるだろう。もう速く走らなくて良いから、歩いたり止まったりは絶対に避けよう。

残り10km430/kmは自分にとってジョグのペースだけど、既に虫の息の身体には大変辛い。でもIRONMANはいつだってキツイさ。残り2kmの折り返しで後続が迫っていないのを確認。最後のレッドカーペットの上はトイレに行った時に感じた幸せを上回る達成感。またIRONMANになったぜ!

 

パフォーマンスは良い点、悪い点あったけれど、4週間後の次戦までに労力無しに改善出来る点がいくつか見つかった。それに一度IRONMANを走っているので、次のレースでもこの経験を身体は覚えているはず。今回は順位に影響しなかったからランで失速しても問題なかったけれど、もし競っていたら確実に順位を落としていた。次戦は現時点で自身が納得できるパフォーマンスを発揮したい。

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