2022.09.02 #TOHARA

IRONMAN MONT TREMBLANT(カナダ、ケベック州)戸原 開人

8時間42分27秒(スイム 0:57:12/バイク 4:43:54/ラン 2:55:41)

プロカテゴリー 11位

アメリカのLAKE PLACIDの大会から4週間が経ち、いよいよカナダで開催されるIRONMAN MONT TREMBLANTのレースの日がやってきました。4週間のカナダ生活は中々楽しい時間だったけど、今回も長いレポートになりそうなので、前置き無しでいきなりレース当日にしちゃいます。

(フィニッシュ地点の写真)

 

当日朝の水温は22.0度。プロは21.9度まではウエットスーツ着用OKなので、ぎりぎりのラインで着用不可となった。

カナダの朝はとても冷え込む。濡れた身体で号砲が鳴るのを待つのはどう考えても寒い。凍えちまうぜ。というわけで当日はウォームアップでの入水は行わなかった。プロのほとんどは泳いでいたが、昔出場したスイスのIRONMANで低体温気味になったのでリスクは避けたい。

アップが終わりスタートまで10分程度整列をするが、前にいた選手は寒くてブルブル震えていた。そんなんじゃ絶対まともに泳げないよ。水に入らなくて良かったなー。

選手のコールが終わり、レースの花火が上がる!たまや〜

 

スイム

前回のレイクプラシッドでは、全然速くない集団からスイムで千切れてしまった反省からスイムの改善に努め、レースの間の4週間である程度パフォーマンスを上げれたと思う。今回も同レベルの集団がスイムで形成されるので、そこからは千切れないようにしたい。自身のスイムに期待するものは何もないけど、この最低限の目標はクリアしないと。また、泳力の改善以外にもHUUBのスイムスキンのフラッグシップモデル、AGILISを新調した。レイクプラシッドは旧モデルを使用していたので、やっぱり新しいモデルの方が速いし、新品の撥水性は大変高い。良い機材を使えることは精神面でもプラスに働いた。

さて、そんな甲斐もあり、スタート後は余裕を持って集団内で泳ぐことが出来た。前回は半分を過ぎて急に腕が重くなったけど、今回はとても余裕がある。間違いなく千切れることはないだろう。7人くらいで時々足をペタペタしたりしてスキンシップを取りつつ仲良く泳ぐ。

後半に差し掛かったところで、2分後からスタートした女子プロに抜かれる。もう来たか、やはりペースが遅いようだなー。せっかくなので男子の列を離れ、女子プロについていこうと後ろに入る。泳力差はあるけど、流れを使えばついていけるかも!なんて思ったけど、あえなく千切れる。まぁ女子プロは男子の2分遅れでスタートしたのにもう追いついているからレベルが違いますわな。おとなしく男子の列に戻る。そして後ろから女子の2番手が抜いてくる。どうせ千切れるのだから今度はもちろん反応しない。すると前を泳いでいた男子選手が列を離れ、2位の女子プロにつく。やめろ!俺たちが敵う相手じゃねー、戻るんだ!と思いながら男子の列の空いた空間を埋める。

しばらくして列をそれた男子プロが撃沈していたので、回収してあげる。言わんこっちゃないぜ。その後は仲良くゴールまで向かいました。上陸前のドルフィンスルーで前に上がり、集団1位でスイムアップ。トップとは8分以上空いたけど、前回よりはマシなスイムだった。

 

バイク

トランジットでちょっと手こずって集団の3番手くらいでバイクに乗車。7人くらいの集団にいるけど、そのうち2人はバイクがとても強い。2人のうち1人はトランジットで先に行ったし、もう追いつけないだろう。後ろからもう1人強いのが来るから、それについて行きたい所。一先ず自分のペースで漕いでいると5km地点くらいでバイクの強い彼が抜いてくる。自分もパワーを上げるけど、想定よりもかなりペースが速い。無理なペース配分は禁物なので、彼を見送ってマイペースで漕ぐ。誰か足並み揃う選手はいないかと後ろを振り返ると、既に他の選手は大きく遅れていた。ああ、今日も一人旅か。まぁ一人旅の強い味方パワーメーターがあるので、自身のペースを守って、なんとか差を最小限に食い止めよう。と思いきや、パワーメーターの数値がどうもおかしい。雨の影響か分からないけど、不正確な数値が出ているようだ。数値に頼っていつも漕いでいるけど、感覚を研ぎ澄ませて漕ぐしかない。オーバーペースにならないように気を付けなくては。

最初の30km地点で水を受け取り、エアロバーの間のボトルケージに差し込む。そしてしばらく漕ぐとケージがカタカタと震える。えっ、なんで震えてるの?と思ったら、ケージが取れてしまった。特殊なエアロバーを使用しているので、無理やりケージを設置している状態だったが、このタイミングで壊れるとは。練習では全く問題なかったのに。給水用のボトルを差し込む場所は無いので、胸にボトルを入れて凌ぐことにした。最初は胸のジッパーが下がってしまい、停止して付けなおして、またロスをしてしまった。スイムで既に遅れをとっているというのに、こんな状況で大丈夫だろうか。コース中にいくつかある折り返しで差を確認するが、想定よりもかなり差が開いている。この位置ではかなり厳しいと思う。しかし前回大会でランは失敗しているので、しっかりと潰れないランニングをしたいと強く思っていた。順位以外にも課題があるので、自身のレースをしなくては。

バイクパートは悪いなりにまとめる事が出来たと感じる。後半にかけて何人か抜いたし、ペース配分もパワーメーターが無い割には悪くないと思う。少なくともまだやる気満々だぜ。

バイクを降車してトランジットに入り、よし、ランに行くぞ!と思ったら、ペナルティ1分を頂く。なにやらバイクを置く前にヘルメットのストラップを外したらしい。どうせ1分休むのならトイレにでも行きたかったなー。

 

ラン

上位争いは厳しい位置にいるが、そこは一先ず置いて良いランニングをしなくては。対面の折り返しが10kmおきにあるので、他の選手の動向をみながら順位の目標を設定していきたい。前回の反省を活かして暑さを感じない序盤からしっかりと身体を冷やして慎重に進むことにした。ペースも上げないように我慢だ。周りには誰もいないし、良い感じに集中してレースを進める。どのくらい私が集中していたかというと、ランの7km地点、途中の長い細道で野生の鹿に出くわした。レース前の練習時に鹿がいると、あっ鹿だ!と声を上げていたが、今回は鹿には目もくれず、声をかけなかった。鹿をシカトしてやったのだ。これはレポートのネタになるなとレース中走りながら考えていたので、実のところあまり集中していなかったのかもしれない。

そうこうしているうちに対面から折り返してきた選手とすれ違う。ベスト10に入りたいと考えていたが、まだまだ差が大きい。でもレースが動くのは後半だ。自分は後半になっても良いペースを刻めるように集中する。

その後はちょっとキツイなーと感じる瞬間もあったが、足取りは大きく落ちずに30km地点を折り返した選手と対面する。1-6位くらいまでは接戦だ。どうあがいても追いつかない。7-8位、まだまだ差が大きすぎる。9位、これもまぁ無理だ。10位は何処だ?私がもっと折り返しに近づいてから対面したいなー。

中々10位は現れなかったが、とうとう姿を確認!なんと2ℓのコーラを抱えて歩いているではありませんか!この状況から察するに回復の見込みがまずないので、彼のことは抜ける。その後、11位で顔なじみの陽気なフランス人、ロマンと対面する。私はここまでかなりの差を詰めてきている。ロマンはこの後コーラ持った選手を抜いて10位に上がるだろうけど、後半失速することが多いので、抜けるはずだと思った。彼を抜けば10位になれる!!やる気が出てきたが、まだ距離が長く無理は禁物だ。自身のペースを守ることを心がける。

そして38km地点!10位のロマンが歩いている!!やった、俺が10位だ!とおもいきや良いペースで走る選手がロマンを抜いていく。えっ、誰だあの選手?エイジだといいな。ロマンはいつもレース撃沈すると、みんなを応援しながらレースを消化する良いやつなので、私が抜き際も声をかけてくれた。「ベスト10すぐ前だよ、アレアレ!」対面の際エイジの選手も多く気づかなかったが、もう一人いたのか。ゴールまで激しいバトルにりそうだ。しかし逃げる彼のペースがとても速い。私は多少撃沈しても11位から落ちる事はないので全力疾走で10位を目指すが差が広がっていく。こんなに体力残っているのなら、もう少し序盤から頑張りなさい!

最後まで精いっぱい走って10位と30秒差の11位でゴールした。

 

結果はイマイチだけど、IRONMAN面白いなーと強く思った。レースに出ない間はモチベーションも上がらず、2022年は故障が多くトホホな感じだったけど、また上を目指して頑張ろうと思う。応援ありがとうございました!

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