2022.09.06 #AKIKO TOHARA

IRONMAN Mont-Tremblant(カナダ・ケベック州) レースレポート 戸原明子

10時間48分17秒(スイム 0:57:31/バイク 5:44:22/ラン 3:59:56)

エイジ優勝

こんにちは!821日にカナダで開催されたIRONMAN Mont-Tremblantに出場しました!約3年ぶりで産後初のIRONMAN復帰レースでした。

今回は7月中旬~8月末の約1か月半、初めての海外長期遠征を家族で行いました。まずはアメリカのIRONMAN Lake Placidで旦那のサポート・応援をし、そしてカナダの大会には夫婦で参加、というスケジュールです。

カナダのレースには2日前から私の両親がカナダに来てくれて、息子の子守をしてくれることになったので、夫婦でIRONMANレースに参加するというミラクルが叶いました!家族のサポートには本当に感謝しかありません。そんな今回の遠征、たくさんの「初めて」と「久しぶり」がてんこ盛りで、私たち家族にとって大きな挑戦でした!

1か月半分の遠征ネタは大量にあるのですが、今回はレースのお話を♪

せっかく家族のサポートの元、叶えることができたIRONMAN!わくわくが止まらない!の、はずが、かなりの緊張により直前の1週間はレースイヤイヤ期に突中。スイム3.8㎞、バイク180㎞、ラン42㎞という距離がいざ実際に迫ってくると・・・どう考えても長すぎる!いつだってレース前は緊張するし怖くなるけど、久しぶりな分、いつもより恐怖感が強かった。それでもなんとかイヤイヤ期はレース当日に卒業を迎え、気合は十分、やる気は満タン!

スイムスタート前のウォーミングアップを済ませるとレース前のアナウンスで「Enjoy your day!」と声をかけられた。なぜか単純なこの一言が、緊張してガチガチだった私にはすごく響いて、思わずにっこり。今日という1日を誰よりも楽しんでやるぞ!!と笑顔でスタートラインに並んだ。

エイジグループのスイムスタートは5、6人ずつ5秒ごとにスタートするローリングスタート形式。水温22度でプロ選手はウエット禁止だったけどエイジグループはウエット可。スタートと同時に足首につけたアンクルバンドチップが作動してタイム計測が始まります。列に並んで待っていたはずが気付いたら1000人以上いるエイジグルーパーの最前列に立っていた。周りにはスイムに自信のありそうな大柄で190㎝近くある男性ばかり!160㎝の私はかなり小柄に見えた事でしょう(^^)☆うふふふ

周りの選手はとても速そうに見えるので同じペースで泳ぐのは厳しいかもしれないけど、後ろを泳ぐと波の恩恵を受けられるので少しだけでもついて行く作戦でスタートすることにした。

花火と号砲と共に私もスタート!

最前列の特権です!気分よく水に飛び込んで、まるでめちゃくちゃ速い選手みたいだ!!でも本当は、スイムは明らかに練習不足な状況で不安いっぱいだった。限りのあるトレーニング時間をスイムよりもバイク・ランの強化に使おうと練習量を減らすことにしたところ、全くモチベーションが上がらず・・・トレーニングをサボりにサボってレースを迎えてしまったのだ(笑)産後3000m以上泳いだのは数える程度しかなく、3800mも泳ぐのは…3年ぶり?という危機的状況!でもサボっていたわりに(というのもなんだが)2日空けずに15000m近く泳いでいた真面目な過去の私と比較してパフォーマンスは悪くなかった。レース前にちょっと泳ぎこめば何とかなるかと思っていたら、泳ぎこまずにレースを迎えてしまったというわけだ(^^;)

(レイクプラシッドの宿のプールで息子と入るこの時間もスイム練習にカウントしていた)

自信ゼロのスイムパート、最初から体力温存を心掛けて、いかに省エネに速く泳ぐかが勝負!(最初からとても弱気!)ちゃっかり大柄メンズの流れに乗って最初の200mほど先頭付近を泳いでみたものの、明らかにハイペースだったから、一度離れて泳ぐことにした。でも一人になると一気にスピードが落ちたのが分かり、危機感を感じる。少し無理してでも一緒に行った方が良かったかな。不安になってきたので泳ぎながらヘッドアップし、周囲を見渡すと右後ろから女性が一人で追いついてきた。(キャップの色が男女で違うので分かった)追いついてきたということは私よりも速い選手!ついて行けるか分からないけど一人で泳ぐよりいいな、と思い後ろを泳ぐことに。

そう、この出会いこそ、今回私がエイジ女子の中で2番目に速いタイムで泳ぐことが出来た奇跡へと導く女神だったのです!!後ろについてみると少し苦しかったけど無理のないペース。この人を逃してはダメだ!たとえ最後まで付いて行けなくても、少しでも長くついて行こう!と思い、必死について行った。この女神の波にうまく乗って泳ぐと、それはまるで流水プールのよう!とてもきれいな泳ぎで蛇行もなくまっすぐ泳ぐ選手だったので、完全お任せでついて行った。もうヘッドアップも途中からしなくていいや、なんて思うほどの他人任せっぷり。とにかく必死だったのであっという間にスイムアップを迎えた。

女神様、ありがとう~~~!!

思っていたよりはるかに良いタイムで泳げたので嬉しくなり、レースもいい波に乗ってきて良い集中力の中バイクをスタート。練習不足な私にこんなラッキーが巡ってくると今後プールに行かなくなりそうだけど、調子に乗らず、もっとトレーニング頑張ります。(笑)
(タイム:57分31秒、年代別1位)

 

さてさて、お次はバイクパート。

アップダウンの多いコースなのでペース配分と栄養補給に気を付けて最後まで大きな失速なく漕ぐよう意識した。腰の痛みが心配だったので早い段階から漕ぎながら伸ばし、かつエアロポジションで無理しすぎないようにした。腰を伸ばす姿勢を取るときは危険がないように減速したのでタイムロスになる。本来は避けたい時間だけど、腰の痛みが酷くなると全く力が入らなくなることもあったので、そんな最悪な状態にならないように気配った。

バイクが始まって間もなく、雨が降り始め、気が付いたら土砂降り。なのに周りの選手は下り坂でもガンガン攻めまくっていて、私が時速60㎞以上で下り坂を走っていても一瞬で遠く離れて豆粒ほどの大きさにしか見えなくなった。ひえ~!恐ろしい!見ているこちらが怖くなるスピード!バイクパートではエイジ男子選手に抜かれる一方なので、遅れている感覚に陥る。でも落ち着いて。周りは大柄の男性選手ばかり。パワーは目標より少し高いくらいだからこのまま維持しよう。

そうこうしているうちに天気は回復して、今度は少し暑さを感じる良い天気になった。心配していた腰の痛みも酷くなることなく、最後まで良い集中力でバイクパートを終えた。

もちろんかなり疲労感はあったけど、余裕を残した状態でランニングへ!以前より高いパワーで漕ぎ続けられたので、強くなったことが分かり嬉しいバイクパートだった。
(タイム:5時間44分22秒、年代別1位)

 

トランジションに入ると沿道に両親と息子の姿が!!笑顔で手を振って応えた。今日は走れそうな気になってきたぞ!やはり家族の応援は何よりもパワーになる。

日本人の参加選手がほとんどいなかったし、バイクをエイジ女子上位で終えられたのでトランジションのアナウンスで盛大に応援してくれた。

AKIKO TOHARA!!!! From JAPAN!!! アリガトゴザイマース!」

沿道もフゥ~~と盛大に盛り上がってくれて、気分はハイテンション!

180㎞も漕いだのに、これから42㎞も走らないといけない状況を冷静に見つめてしまうと苦しくなるので、あえてハイテンションに走り始めてみた。思ったより足取りは軽くて、目標ペースが楽に感じる。沿道の応援が盛り上がっていたから笑顔で返したら、さらに盛り上げてくれた。

走っていたら、無性にお腹が空いてきた。今までのレースでは胃腸のトラブルに悩まされていて、走り切るために無理やりジェルを流し込むような状態だった。なのに今回はトラブルどころか空腹で何か食べたくて仕方がなくなった。この3年間を振り返って内臓が強くなるようなトレーニングで思い当たることと言えば、酷いつわりに耐え切ったことかな。まさかこれは息子からのプレゼント?!初めてレース中にプリッツェルをボリボリむしゃむしゃ頂きました。程よい塩味が最高に美味かった!

そしてレースもいよいよ残り20㎞。ここからが苦しい。でも2周目に入ったところで目の前に再び両親と息子の姿が。

息子はめちゃくちゃ泣いてる!!ギャン泣きというやつだ。その姿を見ると、スタート前、離れたくなくて必死に腕を掴んで泣いていたのに無理やり出てきてしまったことを思い出す。せっかく家族の協力があって叶った1日だ。スタート前にEnjoy your day!と言われた通り、苦しい顔ばかりしてないでママは全力で楽しまないといけないね。かなり足取りが重くなっていたけど、泣いている息子を見たら、絶対に歩いたらだめだと思って、意地でも歩かない止まらないことを誓った。最後まで笑顔で走るぞ!

 

そして、ついについに、ゴール!

 


(タイム:3時間59分56秒、年代別2位)

いっぱい待たせてごめんね。久々に味わうゴール前1㎞は最高に楽しかった!ああ、この楽しさと達成感に魅了されてIRONMANが好きなんだったなぁ、と忘れていた感覚を思い出した。他では味わえない感覚だ。

 

TOTAL10:48:17でエイジ総合6番、年代別優勝!
目標達成!!やったね!

今できる最も良いパフォーマンスができた。もちろん理想としているレベルとはギャップがあり、攻めるレースというより守りのレースしかできなくて悔しいという思いはある。でも産後やってきたトレーニングで力が付いたことも分かったし、強化できる部分や理想とのギャップがどれくらいあるのか、といったレースで全力を出し切らないと分からない部分も分かったのでとても満足だ。何よりIRONMANの楽しさを思い出すことができ、もっと強くなりたいって気持ちも再発した。本当にレースに出て良かった!でも息子を預けてレースに出るのは正直すご~く大変だった。私だけではなくて家族も息子も大変だったと思う。強くなりたいし、レースも好きだからまた出たいけど、しばらくしっかりトレーニングを積んで、強くなってからまたレースに挑みたいという気持ちが大きくなった。

そんなわけで、今回の結果で10月に開催される世界選手権Konaの権利をつかんだけれど、今年は辞退することにした。Konaはいつだって私の夢の舞台だから少し残念だけど、もっと上位で戦えるようになってからの方がきっと楽しいしね。

来年はエイジカテゴリーが30-34で強豪選手がたくさんいるカテゴリーにレベルアップする。もっと強くならないとね。これからのトレーニングがまた楽しみだ。次はもっと自信を持ってスタートラインに並びたいな!

ちなみに、ゴール後、息子はすごく怒ったように泣いていたし、しばらく少しでも離れると泣いてしまうくらいべったりだったけど、レース中は基本的にジジババと一緒に笑顔で過ごしていたのだとか。息子の成長にも感動した一日でした。

息子に負けないくらい成長できるように次のレースに向けてまた頑張ります!

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